スマートフォンや薄型テレビなど,小型化・高性能化が進むデジタル機器やインテリジェント化が進む自動車などの需要拡大を受け,国内の半導体メーカーの多くは生産増強に追われています。また,昨今の半導体市場では,小型薄型化・多機能化に加え,低価格化が進み,全世界的にも携帯電話の普及が進むなどアナログからの置き換えが急速に進むことが予想されます。
こうした流れを受け,半導体の各製造工程に関わる装置メーカーでも,微細化・高集積化に対応した技術革新への急速な対応を求められています。
E社は,半導体製造における「前工程」を担う装置メーカーです。
近年,半導体業界では先進技術の開発も急ピッチで進んでおり,すでに線幅32nm(ナノメートル)のデバイスの量産が一部で本格化され,さらに22nm以降のデバイス技術の開発も着実に進むなど,半導体技術はナノテクノロジーと密接に連携して,微細化・高集積化の動きを加速させています。
こうした背景からE社にも,半導体の飛躍的な進化に合わせて短期間での開発や,高スループットで安定した品質を実現しながらも低コストの装置開発が求められています。
高スループット化を実現するためには搬送部分の性能を見直す必要がありました。 E社設計主任のS氏は,新しい装置の開発に向けた課題についてこう語ります。
「現行機では,ウエハ搬送などスピードと位置決め精度が求められる部分には,サーボシステムを採用しています。新製品開発にあたり,搬送部分をよりスピードアップさせるには,モータサイズのアップやソフト開発などを検討しました。ですが,開発に時間がかかるうえに,装置が大型化すると逆に単位面積あたりの生産性低下にもつながってしまいます。」
回路を形成する前工程は,半導体製造工程の多くを占めるため,より高いレベルのスループットが求められます。また,精度によって,製造ロスの割合が左右されるので安定した品質も同時に実現しなければなりません。さらに,半導体の市場価格の下落により,ユーザーの要求を満足させるためには,装置のコストダウンも考えなければなりません。
新しい装置の開発を続けていたS氏は,とある産業機器のイベントで山洋電気のクローズドループステッピングシステム「SANMOTION Model No.PB」と出会います。営業担当者に話を聞くと,このシステムを採用し,飛躍的な改善を果たしたメーカーの事例があるとのこと。うまくすれば,自分たちにも適用できるのではないかと思い,詳細な説明を求めることにしました。
なかでもS氏が着目したのは,サーボモータに比べて低速域でのトルクが大きい点と,ステッピングモータ特有の「脱調」が無い点でした。E社の装置では短いストロークの位置決めが大半を占めていたため,低速域での高トルク特性が有利に働き,同等の位置決め精度を保ちながら駆動部のダウンサイジングなどの改善効果が期待できました。
E社はさっそく,「SANMOTION Model No.PB」の評価を開始しました。実際に動作させてみるとゲイン調整などサーボのような複雑なパラメータ設定は不要で,あらかじめ設定したポイント番号・プログラム番号を,汎用I/Oで指定するだけで簡単にシステムをコントロールできたため,評価工程はスムーズに進行。そして以下の結果を得ました。
搬送部分の性能向上を確信したE社は,ほどなく「SANMOTION Model No.PB」の採用を決断しました。そして新しい半導体製造装置に組み込むことで大幅な性能向上を果たしたのです。S氏は今回の採用についてこう総括します。
「今回,「SANMOTION Model No.PB」に出会ったことで,画期的な性能向上につながりました。信頼性はそのままで高速化できたことにより業界最高レベルのスループットが実現できました。搬送部分を約半分に小型化できたので,ユニットの追加搭載数が増えて,単位面積あたりの生産性が飛躍的に向上しました。また,従来のサーボシステムからの置き換えにより,駆動系のコストが約75%もダウンしました。」
E社の新たな装置は,ユーザーからも高い評価を得ています。同社の装置は今後も半導体製造を支えていくでしょう。
ステッピングモータについて詳しくは「ステッピングモータとは? 仕組み,種類,使い方(駆動方式・制御方法),メリットや特徴を解説」もご覧ください。
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