
多くの企業がデータセンターを利用したITインフラ構築を進める一方で,事業継続に直結する重要機密データや大容量のデータについては,自社内のネットワーク環境下でホストしている企業も少なくありません。そして,過日の東日本大震災以降,データ保護の重要性があらためて認識されるとともに,こうした企業の多くが,自然災害などに起因する万が一の停電に備えた「電源対策」を重視するようになっています。
そこでクローズアップされているのが,UPS(無停電電源装置)の信頼性です。その選択は慎重を期すべき部分ですが,増設や更新が煩雑なサーバルームにおいて,都度選定された小容量UPSは,全体の最適化が難しいのが実情です。
D社は,製品の企画・設計・開発をおこなうファブレスメーカーです。
同社は金型など非常に機密性の高いノウハウを保有しており,150人もの設計者が大量かつ重要なCAD図面や評価結果などのデータを扱っています。そのため,「データ保護」を最重要の課題として,データのバックアップやリカバリ,情報漏えいについては万全の体制を構築してきました。しかし,過日の大震災を機に,対策の力点は「電源対策」へとシフトすることになりました。
というのも,サーバやストレージ,PCなどのIT機器は,停電だけでなく,供給電力が不安定になるだけでも,機器の破損やデータ消失につながる可能性があるからです。同社情報システム部のE氏はこう語ります。
「東日本大震災が発生した際,停電により一部サーバのデータが破損してしまいました。幸い,バックアップサーバは安全にシャットダウンできたため無事で,後でリカバリすることでデータ消失という最悪の事態には至りませんでしたが,電源対策の重要性を痛感することとなりました。」
※停電について詳しくは停電の基礎知識と対策:停電の種類と「瞬停・瞬低・瞬断」とは?
E氏らがサーバ異常に気づいてサーバルームに入ったところ,肝心の業務サーバ用のUPSはバッテリ切れを起こしていたのです。
「あとで原因の究明をおこなったところ,複数のUPSのバッテリが劣化しており,停電時にバックアップできないことがわかりました。あの時UPSさえ生きていれば,事なきを得ていたはずです。これでは電源のバックアップとして何の意味もありません。これを機にサーバルーム全体のUPSを見直し,万が一に備えた確実な給電体制を再構築することにしました。」(E氏)
同社では,基本的にはUPSを導入していましたが,UPSの仕様など選定基準は特になく,サーバ増設の際にその都度選定していたため,結果的にさまざまなメーカーの小型UPSが混在するサーバルームとなっていました。そして,今まで停電による実害がなかったため,いつの間にかUPSに対する認識が希薄になっていたのです。
「これまで現場の要求に応じて,サーバや周辺機器の増設を繰り返してきました。結果として,複数メーカーのさまざまなUPSが数十台設置されました。しかし,サーバルーム全体を見直したときに,負荷率やバッテリ寿命などの管理がまったくできておらず,UPSの信頼レベルもバラツキがあることに気がつきました。最近は,サーバ間の連携が進んでいて,1台のサーバも落とすわけにはいかないのです。」(E氏)
これを機にUPSのリプレイスを決定したE氏らが要件として挙げたのは,以下のポイントでした。