
後日,仕様確認のためにY社を訪れた山洋電気の担当者は,H氏らより要求仕様を詳細にヒアリングしました。
現行モデルの図面を持ち帰り,まずは部品ごとの負荷イナーシャを計算してモータを選定することにしました。その結果,「56mm角2相ステッピングモータ」をベースにカスタマイズした中空軸タイプのモータ(中空径φ8mm)を提案します。
「打ち合わせから提案までの期間は1週間程度と,非常にスピード感ある対応でした。また,現行で使用しているボールスプライン機構をそのまま使えるように,モータをカスタマイズしていただきました。」(H氏)
続けてH氏らは,提案されたモータについて実機を用いて各種性能の試作評価を実施することにしました。
検証の結果,ステッピングモータを中空軸タイプにすることによるさまざまなメリットが確認できました。
まず,中空内径にボールスプラインを通すことで,機構の大幅な簡素化を実現しました。
また,ベルトのテンションを維持するためのメンテナンスが必要なくなり,ベルトの劣化によるトラブルも未然に回避できるようになりました。
仮に故障したとしても,ベルト駆動の場合に必要だった手順―ベルトを取り外すために関連部品を外して交換し,ベルトテンションを調整し,部品を組み付ける―が,交換のみで済むため,装置の停止時間が短く済み,メンテナンス工数を大幅に削減することができました。
また,モータの回転がダイレクトに伝わることで,位置決め精度も飛躍的に向上。さらに中空軸にしたことで,ボールスプライン1本で直動動作と回転動作がおこなえるようになりました。
「従来の装置では直動と回転でボールスプラインを分けていましたが,1本に両機能を搭載できるので省スペース化でき,結果的に30%もの装置コストダウンに繋がりました。」(H氏)
こうして詳細な検証の後,Y社は「中空軸モータ」の正式採用を決定。
H氏は今回の導入についてこう語っています。
「モータのリプレイスにより,新モデルにおいて期待どおり精度の向上とコストダウン,さらにメンテナンス工数の削減を実現できました。山洋電気には,最適なモータの選定からカスタマイズまで,システムを理解したうえできめ細かく対応していただきました。」
Y社の新モデルはリリース後,期待通り大きな市場優位性を確保し,順調にシェアを拡大。グローバル競争下における半導体製品のコスト削減と品質確保に大きく貢献しています。