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解決事例
勝ち残りのカギは「サイクルタイム短縮」!

モータサイズを変えずに “高速・高トルク”を両立させた技術とは?

検査装置メーカーS社(従業員数:約850名)

Problem

近年,アジア各国の産業においては,従来の労働集約型からFA(ファクトリーオートメーション)への移行が急速に進んでおり,日本国内の産業メカトロニクスメーカーの多くは,中国やインドをはじめとしたアジア市場向けの製品開発に力を注いでいます。

しかし,長期化する円高や世界的な景気減速を背景に,昨今の市場競争は激化。市場優位性を確保しシェア拡大を図るためには,価格競争を視野に入れた“生産コストの削減”に加え,“品質の向上”も必要不可欠な要素となってきています。

コスト競争が激化するアジア市場。“勝ち残り”に求められるのは,「サイクルタイム短縮」。

各種FA機器や検査装置,精密機械の開発・製造,販売を手がけるS社では,近年の国内市場の伸び悩みを受け,グローバル戦略の強化を決定。主力製品のひとつである,「基板外観検査装置」などの各種検査装置について,国外でのシェア拡大を目指していました。
特に,成長市場である中国やインド,タイなどをはじめとする,アジア市場での製品展開と販路拡大には積極策を講じており,マーケットの特性上,国内向け製品の廉価版モデルを開発し,現地メーカーに販売していました。

しかし,市場競争が激化するなか,“低価格化路線”を進んでいるだけでは消耗戦となり,収益性を悪化させる要因にもなりかねません。競合他社との差別化を図り,アジア市場でのシェア拡大を成功させるには,低価格でありながらも“高い性能”が求められていたのです。同社の技術・開発本部長T氏はこう語ります。

「今後,アジア各国でも生産工程の自動化が急速に進められていくと考えられますが,これまでのように単に価格を下げるだけでは,外資系を含む他のメーカーに太刀打ちできません。今後は,アジア市場においても国内同様,検査効率の向上による『サイクルタイム短縮』が必要不可欠な要素になるでしょう。」

検査スピード向上に必要な“モータのトルクアップ”は,サイズとコストを犠牲にするしかないのか…?

こうした背景からT氏は,「基板外観検査装置」の輸出向け次期モデルについて,性能面の見直しを図ることを決定します。
「サイクルタイム短縮」という市場ニーズを満たすためには,検査効率を向上する必要があります。まずは,搬送部分について見直しをおこないましたが,現行モデルでは“搭載モータ”がネックとなり,十分な搬送スピードのアップができませんでした。

「コストの問題から,装置の搬送ベルト部分にはステッピングモータを使用していました。搬送スピードを上げるには,“より高いトルク特性”が必要だったのですが,従来のステッピングモータは高速域におけるトルク低下が著しく,これ以上スピードを上げることができませんでした。」(T氏)

解決手段のひとつとして,モータサイズを大きくする方法がありましたが,モータが大きくなればその分コストが増加してしまいます。また,モータサイズのアップは装置自体のサイズアップにもつながり,製品競争力の低下を招きます。

現状のモータサイズのまま,スピードアップしてもトルクを落とさない方法を,なんとか探し出す必要がありました。

課題
  • 基板外観検査装置の搬送スピードを上げ,「サイクルタイム短縮」を図りたい。
  • 現行のステッピングモータでは“高速域のトルク低下”が著しく,搬送スピードを上げられない。
  • トルク特性と引き換えにモータサイズを大きくすると,コスト高になり本末転倒。

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Solution

モータの「巻線仕様」のカスタマイズにより,“搬送スピード10%アップ”を実現!

「モータサイズはそのままで,必要なトルクを維持しながら搬送スピードを上げるには―。」

解決策を探していたT氏は,サーボモータの取り引きで付き合いがあった山洋電気に,これらの問題を相談してみることにしました。

山洋電気の営業担当はS社の要件を詳細にヒアリングし,次のような提案をしました。
「ステッピングモータはトルクをアップさせると最高速度が下がり,逆に最高速度を上げるとトルクが下がる“トレードオフ”の関係にあります。貴社のご要望に合わせてトルク特性を調整しましょう。」

ほどなく,「巻線仕様」をカスタマイズした試作品を受け取ったS社は,実機に組み込んで検証しました。
「巻線仕様を細かく調整することで,必要な速度でのトルクを確保し,最適な特性を出していただきました。その技術力の高さには驚きましたね。結果的に,“搬送スピードの10%アップ”に成功することができました。」(T氏)

モータのサイズを変えずに済んだことでコスト増が避けられるとともに,装置サイズも現行のまま維持することができました。
また,試作品受け取りまでの期間はわずか3週間で,山洋電気の迅速さもT氏を満足させました。

「その後,ステッピングモータの生産現場(山洋電気神川工場)を見学させてもらいました。製造工程や部材管理はすべてシステム化され,生産管理体制も完全に可視化されていました。これならば,量産態勢に入っても安心して任せられると判断できました。」(T氏)

柔軟なカスタマイズで,装置の性能向上に貢献。「25%ものサイクルタイム短縮」に成功!

フランジやシャフト長を従来品に合わせて変更する提案があったことも決め手となり,S社は,山洋電気製ステッピングモータの正式採用を決定しました。

さらに,検査アルゴリズムなどのシステムを見直した結果,次期モデルでは「サイクルタイム25%短縮」を実現し,飛躍的に性能アップすることができました。今回の決断について,T氏はこう語っています。

「山洋電気には,単にステッピングモータを供給するだけでなく,当社の要件に沿った柔軟なカスタマイズにより,実現が困難と思われた次期モデルの大幅な性能向上に貢献していただきました。これで,価格競争にピリオドを打ち,ものづくり日本ならではの高い品質・性能を武器に,アジア市場で差別化を図ることができそうです。また,部品の迅速な納品など,常に当社のニーズを満足させていただき,非常に感謝しています。」

ステッピングモータについて詳しくは「ステッピングモータとは? 仕組み,種類,使い方(駆動方式・制御方法),メリットや特徴を解説」もご覧ください。

効果
  • 「サイクルタイム25%短縮」の実現により,次期モデルの市場競争力を強化。
  • ステッピングモータの「巻線仕様」のカスタマイズにより,搬送スピードを10%向上。
  • モータサイズを現行維持することで,スピードアップとコスト抑制を両立。
  • わずか3週間での試作品提示や,従来品に合わせたカスタマイズなど,柔軟な提案。

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