携帯電話,ノートパソコンを始めとするあらゆる電子機器の小型化・高性能化にともない,電子基板の部品はますます小さく,パターンも微細化しています。1mmにも満たない小さな部品でも,正確にはんだ付けされていなければ不具合の原因となります。そのため基板の外観検査は欠かせず,より高速で高精度な検査装置が求められています。
さまざまなFAシステムや検査装置の開発・製造・販売を手掛けるB社では,基板外観検査装置の次期モデル開発に着手していました。基板外観検査装置は,均一で高品質な基板を作るためには欠かせない装置です。次期モデルにおける最重要課題は,搬送部分の振動を低減することでした。同社設計・開発部A部長はこう語ります。
「当社の基板外観検査装置の搬送部分には2相ステッピングシステムを使っていたのですが,基板を搬送する際の振動が問題となっていました。移動してきた基板をセンサで検出して位置決めをしていましたが,移動時に基板が振動すると,センサの検出に誤差が生じ,停止精度が落ちてしまうのです。2相ステッピングシステムでは精度に限界を感じていましたが,上位を含めたシステム全体を見直していては開発に時間がかかりすぎてしまいます。開発期間も限られているので早急に解決する必要がありました。」
また,振動によって騒音が大きくなるという問題も生じていました。
加えて,装置の小型化についても,検討事項となっていました。
「競争力を高めるために,装置の小型化が必要でした。搬送部分の機構を小型化したかったのですが,モータを小さくしてしまうとトルクが不足して,搬送スピードの低下を招きかねません。検査装置には,生産効率の向上に貢献するため,精度の高い検査を高速でおこなう性能が求められます。スピードを犠牲にしては元も子もありません。」(A氏)
後日,要件を詳細にヒアリングした山洋電気の担当者は,A氏に提案をします。
「5相ステッピングモータなら,振動と騒音を下げることができます。また当社のDC入力マイクロステップドライバには,2相ステッピングモータからの置き換えを容易にするために,“2相モード”が搭載されています。そのうえ,“オートマイクロ機能”も搭載されていますので,どのような分解能を設定しても,ドライバは常にマイクロステップでモータを制御します。つまり,分解能の設定に関わらず,常に振動も騒音も最小に抑えることができるのです。」
A氏は,早速サンプルを入手して,2相ステッピングシステムから置き換えの検証をしてみることに。
「上位を変更せずに,5相ステッピングモータがまったく同じ動作をしたときには,これだと思いました。短期間でシステムの置き換えが可能で,しかも振動も騒音も大幅に抑えることができると期待できました。」
その後,詳細な評価をおこなった結果,振動を67%,騒音も30%低減できることが確認できました。また,振動を抑えられたので基板停止精度と位置決め時間も大きく向上し,装置のサイクルタイム短縮にもつながりました。
さらに,山洋電気の担当者は検査時に基板を固定する突き上げ軸に,リニア駆動ステッピングモータを提案します。
「突き上げ軸には,ボールねじを使っていましたが,それをリニア駆動ステッピングモータにしてはどうか,とご提案いただきました。この提案には,なるほどと思いましたね。モータにボールねじが内蔵されているので,複雑な構造をなくすことができます。ストロークが心配だったのですが,80mmあるので問題ないことも分かりました。いままでは,“モータ,プーリー,ベルト,ボールねじ”という構成だったのが,リニア駆動ステッピングモータに集約されることで,省スペース化することができました。」(A氏)
そのうえ,ステッピングモータとボールねじが一体化しているので,機構が簡略化して突き上げ軸の位置決め精度も向上することができました。
こうして試作機において期待通りの性能を確認したA氏は,次期モデルに搭載するステッピングシステムを,山洋電気の5相ステッピングシステム「SANMOTION F5」のマイクロステップモデルとリニア駆動ステッピングモータへ置き換えることを決定しました。A氏はこう語っています。
「当社の要望に基づいた柔軟な提案のおかげで,最適なステッピングシステムを手に入れることができました。新モデルでは目標通り振動を低減でき,検査精度の向上と騒音の低減をはかることができました。お客さまの生産ラインのサイクルタイム短縮に貢献する検査装置を開発することができ,大変満足しています。」
ステッピングモータについて詳しくは「ステッピングモータとは? 仕組み,種類,使い方(駆動方式・制御方法),メリットや特徴を解説」もご覧ください。
公開日: