
後日,要件を詳細にヒアリングした山洋電気の担当者は,A氏に提案をします。
「5相ステッピングモータなら,振動と騒音を下げることができます。また当社のDC入力マイクロステップドライバには,2相ステッピングモータからの置き換えを容易にするために,“2相モード”が搭載されています。そのうえ,“オートマイクロ機能”も搭載されていますので,どのような分解能を設定しても,ドライバは常にマイクロステップでモータを制御します。つまり,分解能の設定に関わらず,常に振動も騒音も最小に抑えることができるのです。」
A氏は,早速サンプルを入手して,2相ステッピングシステムから置き換えの検証をしてみることに。
「上位を変更せずに,5相ステッピングモータがまったく同じ動作をしたときには,これだと思いました。短期間でシステムの置き換えが可能で,しかも振動も騒音も大幅に抑えることができると期待できました。」
その後,詳細な評価をおこなった結果,振動を67%,騒音も30%低減できることが確認できました。また,振動を抑えられたので基板停止精度と位置決め時間も大きく向上し,装置のサイクルタイム短縮にもつながりました。
さらに,山洋電気の担当者は検査時に基板を固定する突き上げ軸に,リニア駆動ステッピングモータを提案します。
「突き上げ軸には,ボールねじを使っていましたが,それをリニア駆動ステッピングモータにしてはどうか,とご提案いただきました。この提案には,なるほどと思いましたね。モータにボールねじが内蔵されているので,複雑な構造をなくすことができます。ストロークが心配だったのですが,80mmあるので問題ないことも分かりました。いままでは,“モータ,プーリー,ベルト,ボールねじ”という構成だったのが,リニア駆動ステッピングモータに集約されることで,省スペース化することができました。」(A氏)
そのうえ,ステッピングモータとボールねじが一体化しているので,機構が簡略化して突き上げ軸の位置決め精度も向上することができました。
こうして試作機において期待通りの性能を確認したA氏は,次期モデルに搭載するステッピングシステムを,山洋電気の5相ステッピングシステム「SANMOTION F5」のマイクロステップモデルとリニア駆動ステッピングモータへ置き換えることを決定しました。A氏はこう語っています。
「当社の要望に基づいた柔軟な提案のおかげで,最適なステッピングシステムを手に入れることができました。新モデルでは目標通り振動を低減でき,検査精度の向上と騒音の低減をはかることができました。お客さまの生産ラインのサイクルタイム短縮に貢献する検査装置を開発することができ,大変満足しています。」