多くの中小規模の産業機械メーカーが,“一品モノ”装置の開発や小ロット生産など,小回りの利いた対応力を武器に会社経営をおこなっています。しかし,小口受注では必然的にバッファが小さくなるため,常に短納期やコストダウンの要求に追われながら,懸命に品質向上を支えているのが現状です。
各種工場向け生産設備の開発・製造などを手掛ける産業機械メーカーW社では,小口案件の装置開発について,いくつかの難題を抱えていました。
同社には年に数度,スポット受注や特殊品の開発依頼が舞い込むのですが,こうした案件は納期が短いため,装置の負荷条件を事前に詳細詰めできないケースが多々ありました。
そのため,新たにモータ容量を選定している余裕がなく,往々にして過去の経験からマージンを大きく取って容量を決定し,試作時の実機において初めて容量選定の良否を判断するケースも少なくありませんでした。同社開発マネージャーF氏はこう語ります。
「極端な話,動けばそれでOKとしていました。見切り発車とならざるを得ないため,モータの容量には余裕を持たせる必要があり,結果としてオーバースペックとなってしまうケースが常に発生していたのです。」
今回,W社はとあるスポット案件の試作機製作において,200Wのサーボモータを採用しましたが,負荷に合わせた選定をおこなった結果ではありませんでした。
「前が200Wだったから今回も,という程度で決めてしまっていました。これが,結果的にはトータルコストを高くし,十分な利益が確保できない要因となっていました。」(F氏)
顧客ニーズへの臨機応変な対応で市場競争を生き残ってきたW社ですが,F氏は開発を抜本的に改善する必要性を感じていました。
F氏は,たまたま量産装置の定期サポートで訪れた山洋電気の営業担当者に,自社の抱える問題を相談しました。実機データを見た担当者は,さっそくF氏にクローズドループステッピングシステム「SANMOTION Model No.PB」への変更を提案しました。
翌日,担当者から提出された詳細なモータ選定結果を見ると,200Wのサーボモータでは予想通りオーバースペックであることが分かりました。また,サーボシステムをクローズドループステッピングシステムに置き換えることで,予想以上にトータルコストが抑えられることが分かり,驚きました。
「たしかにSANMOTION Model No.PBですと,高トルクな低速域を活用することでモータの小型化も図れますし,サーボモータに比べコストダウンも可能なので,最適の選定といえました。しかし,納期が迫っているためモータを置き換える時間がないことを伝えました。」(F氏)
これに対し担当者は,最適なスペックのシステムを短納期で納品することができる「短納期納品サービス」があるので,モータの置き換えは今からでも十分に間に合うことをF氏に説明しました。この“短納期納品”という提案に,F氏はさらに驚きました。
「山洋電気が即納対応できるとは思わなかったので,もともと候補に入れていなかったのですが…翌日には発送できるとのことで,これならお客さまの納期に十分間に合います。」(F氏)
F氏はサーボシステムからの置き換えを決断し,担当者に伝えました。その後,予定通り発注後わずか2日で納品され,納期内のスケジュールで実機テストをおこなうことができました。
「山洋電気の製品は,品質や性能・信頼性については高い評価をしていましたが,納期がかかると思い込んでいました。ですが,今回,さまざまな製品が短納期納品サービスに対応していることを知り驚きました。サーボシステム・ステッピングシステムだけでなく,ファンやUPSもラインアップがあるので製品選択の幅が広がりそうです。」(F氏)
こうしてW社では,負荷に合わせた最適なシステム提案により,コストダウン・搭載スペースの削減を実現することができました。また,高性能なサーボシステム,ステッピングシステムがタイムリーに納品されることで,開発工程全体の改善にも大きく寄与したといえます。F氏はこう語っています。
「今回の提案は,短納期納品サービスの対象製品に豊富なラインアップを持つ山洋電気だからこそ可能なものだったと思います。これまで,期間の短い製品試作などでは山洋電気を選定の土俵から外していたので,非常にもったいないことをしていました。今後,モータに限らずほかの部品についても相談していきたいと考えています。」
ステッピングモータについて詳しくは「ステッピングモータとは? 仕組み,種類,使い方(駆動方式・制御方法),メリットや特徴を解説」もご覧ください。
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