近年,製造業の悩みの種となっている電源異常による障害。電力系統を構成する送電線への落雷による送電トラブルや電源ノイズなどが原因となる停電や瞬低(*1),瞬停(*2)は,最悪の場合はシステム停止や,設備の破損を引き起こす場合があります。
*1 瞬低(瞬時電圧低下)
送電線などの故障により,0.07~2秒間電圧が低下する現象。
*2 瞬停(瞬時停電)
瞬停(瞬時停電) 送電線などの故障により,瞬間的に停電が起こる現象。
ペットボトル入り飲料などを製造するT社。同社はこのほど大手コンビニよりPB商品の製造を受注したことで生産量が急増。トラブルによる納期遅延を防ぐためラインの安定稼働対策に乗り出していました。なかでも懸念されたのは落雷や大雨などによる停電や瞬低,瞬停によって引き起こされるライン停止でした。T社生産管理部のS部長はこう語ります。
「ひとたびラインが止まれば1分あたり数百本の製品ロスが生じてしまいます。装置の故障や飲料の吹きこぼれなどのトラブルも懸念されますし,ラベラー装置の加熱工程における火災の発生なども危惧されます。万が一火災が発生した場合には,火を消し止めてもボトリング工程のクリーンルームを清掃する必要が生じ,ライン復旧までの時間や人的工数を考えると,その損害は当社にとって命取りともなりかねません。工場はフル稼働状態で,対策は待ったなしでした。」
加えてS氏は,瞬低によるその他のトラブルや,工場内の動力設備から発生する高調波電流への対策にも悩んでいました。
「過去に瞬低によるセンサ異常で製品不具合が発生したことがありました。また,当社の工場は,“高調波抑制対策ガイドライン”の対象となるため,遵守しなくてはいけません。ラインの安定稼動以外にも,対策が必要な課題がありました。」(S氏)
S氏は無停電電源装置(UPS)や瞬時電圧低下補償装置の導入を検討しましたが,自社工場に最適な対策がなかなか判断できず,頭を抱えていました。困っていたS氏は,以前,他部門で取り引きがあった山洋電気とコンタクトを取り,こうした問題を相談しました。
「動力系のバックアップを考えていたのでUPSがいいというところまでは判断できました。ですが,UPSの場合,常時商用給電方式だと,平常時は商用電力を供給するため,電力ロスは小さいですが,停電時にはインバータに切り替わるまでに時間がかかり,『瞬断』が起こります。常時インバータ給電方式は,停電の有無に関わらず,常にインバータを通して電力を供給するため,停電時に完全無瞬断で電力を供給することができますが,電力ロスが大きくなってしまいます。どの方式を選択すればいいのか決めかねていました。」(S氏)
そこで,山洋電気の担当者は両方の方式のメリットを兼ね備えたパラレルプロセッシング給電方式のUPS「SANUPS E23A」を提案。この提案にS氏は強く興味を持ちます。
「提案してもらった『パラレルプロセッシング給電方式』は2つの方式と違い,商用電源とインバータが並列になっているので,平常時は商用電源を供給し,停電・瞬低・瞬停の場合はインバータによる完全無瞬断の電源供給が可能だそうです。常時インバータ給電方式に比べ電力ロスを小さくできて,ライン停止による装置の故障の心配もありません。また,97%の高い変換効率とのことで,電力消費量の大幅カットも実現できると期待しています。」(S氏)
さらに,高調波電流についての悩みも,この提案で解決します。
「『SANUPS E23A』に搭載されている『アクティブフィルタ機能』で,モータから出る高調波電流に対して逆電流を与えることにより,高調波電流もキャンセルしてくれるとのことでした。さらに,過負荷耐量が800%(500ms)あり,モータ動作時の突入電流(*3)に対する耐久性が大きいので,他社製品に比べワンランク下の容量で十分対応でき,省スペースかつ低コスト化も実現できます。工場ならではの事情を加味した,私どもにはぴったりの提案でした。」(S氏)
*3 電気機器において電源を投入した際に,初期段階で定格電流値を超えて一時的に流れる大電流。
提案に納得したS氏はさっそく社内審査をおこない,ほどなくT社は「SANUPS E23A」の正式採用を決定しました。
こうして山洋電気製UPSの導入を果たしたT社。
「今までは,夜に雷が鳴り始めると,瞬停などによる装置への影響を常に心配していましたが,『SANUPS E23A』を導入したことでこうした心配から解放されました。また,電力消費量の大幅カットや,省スペースかつ低コスト化など,当初の課題になかったことまで改善が図れました。山洋電気にはとても感謝しています。」(S氏)
パラレルプロセッシング給電方式について詳しくは「パラレルプロセッシング給電方式のUPS」もご覧ください。
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