各種医療機器を開発・製造するE社は,このたび新しい輸液ポンプの開発に取り掛かりました。新製品の開発を担当するT氏は,次のように語ります。
「一定の速度で正確に投薬するときに使用される輸液ポンプは,使用頻度の高い医療機器のひとつです。流量を制御するポンプ機構にモータを使っているのですが,病室で長時間稼働し続ける機器なので,モータの振動からくる音は,患者さんを不安にさせたり,睡眠を妨げたりする要因になりかねません。
これまでも静音化の課題はあったのですが,輸液の流量精度を保つことが優先されるため,ある程度のモータ音はやむをえないという認識でした。ですが,患者さんの快適性を向上するためにも,製品の差別化を図るためにも,新モデルでは静音化が重要な開発課題となっていたのです。」
E社は,ポンプ機構に2相のステッピングモータを使用しています。改善手段として最初にあがったのは,現行のステッピングモータを2相から5相に変えることでした。
「5相のステッピングモータに変えることで,ステップ角が小さくなり振動の低減と静音化を実現できます。しかし,この場合はドライバも5相用に変更する必要があります。医療機器には義務づけられている認証があるため,システムを大幅に変更をすると,認証も取り直すことになります。そうなると,評価期間と合わせて認証取得までを含め,開発期間が大幅に延びてしまうため,現実的ではありませんでした。」(T氏)
なるべく現在取得した認証のままで,新モデルの静音化を図りたいT氏は,検討を続けましたが,良い方法が見つかりませんでした。
輸液ポンプの静音化を図るため数社に情報提供を求めたT氏は,山洋電気からステッピングモータに取り付け面ダンパを装着するという提案を受けました。
「ステッピングモータにオプションのダンパを装着するとモータの振動が抑えられるそうです。この手法はFA業界では良く使われているとのことですが,初めて知りました。
さらに,定量的にモータ単体の周波数成分が分かる騒音特性の比較資料を提供してもらい,騒音の低減が期待できました。これを受けて実機評価をすることを決めました。」(T氏)
実機評価の結果,騒音が25%も抑えられることが確認できたことから採用を決定しました。こうしてE社はモータの振動を低減し,輸液ポンプの新モデルの静音化を実現しました。
「山洋電気は,私たちが知らなかったFA業界での技術やノウハウを踏まえ,的確な提案をしてくれました。おかげさまで,再度の認証取得をする必要もなく,開発課題だった静音化を実現できました。当社の製品のことを理解してくれる山洋電気の最適な提案とサポートが,非常に心強かったです。」(T氏)
ステッピングモータについて詳しくは「ステッピングモータとは? 仕組み,種類,使い方(駆動方式・制御方法),メリットや特徴を解説」もご覧ください。
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