自動化の製造ラインにある接着剤やシール剤を塗布する自動塗布装置「シーリングマシン」も世界各国で市場を拡大させています。今回,シーリングマシンを製造販売しているF社でも, EtherCATに対応した新モデルのシーリングマシンを開発することになりました。F社システム開発部のH氏はこのように語ります。
「EtherCATが大手メーカーに採用されたことで,製造ラインを構成する装置が次々とEtherCATに対応しています。他の製造ラインの装置との親和性を高めるためにも,EtherCAT対応のモーションコントローラを探すことになりました。」
新装置のもう一つの課題は,小型・省スペース化でした。
「現状のPLCの場合は,モータを1軸増やすごとに,パルス列ユニットとドライバをそれぞれ増設する必要があります。ユニットの増設に伴い配線の本数も増え,それらを収納する配電盤のスペースも大きくなります。装置を小型化するために,これらの機器構成がネックになっていました。」(H氏)
さらに新装置では,サイクルタイムを向上させるため,従来機以上の高速性が要求されました。シーリングマシンの役割は,定めた位置に定めた量の接着剤を効率よく塗布することです。塗布の対象は,直線だけでなく,円弧などの曲線も混在しています。そのため複数のモータの位置や速度を調整しながら,正確な軌跡を描く必要がありました。
H氏は,軌跡制御が実現できるEtherCAT対応のモーションコントローラを探し始めました。しかし,H氏の要件を満たすモーションコントローラが見つからず,行き詰ってしまいました。
解決策を探していたH氏は,別件でF社を定期訪問していた山洋電気の営業担当にこれらの課題を相談しました。営業担当は現在の課題とシステム要件を詳細にヒアリングし,後日,モーションコントローラ「SANMOTION C S100」の提案をおこないました。
「モーションコントローラ『SANMOTION C S100』は,EtherCATの仕様であるサイクリック位置制御モードをサポートしており,各軸の位置を2/1000秒単位の通信周期で指令することにより,高精度な軌跡動作を実現できるそうです。他社のEtherCATコントローラでは,目標位置の座標や速度を指定するプロファイル位置制御モードのため,位置決め途中の軌跡は制御できませんでした。『SANMOTION C S100』であれば,シーリングマシンの動作精度を維持しながら,サイクルタイムの向上が期待できます。さらに,PCの汎用ブラウザにて,動作状態のモニタリングやプログラム変数の読み書きができるWebサーバ機能を搭載していることから,IoT(*2)に対応したシステムを容易に展開できると考えました。」(H氏)
さらに,モーションコントローラ「SANMOTION C S100」と多軸システムを用いた省スペース化の提案を受けました。
「業界最小のモーションコントローラ『SANMOTION C S100』と多軸クローズドループステッピングシステム『SANMOTION Model No.PB』を組み合わせることで,制御機器スペースを最小化した事例があるそうです。
これまでの装置では,3軸のモータを3軸のドライバで制御していましたが,山洋電気の多軸クローズドループステッピングシステム『SANMOTION Model No.PB』を利用すれば,3軸のモータを1台のドライバで制御することができます。EtherCATでの機器間の接続は1本のケーブルでつなぐだけなので,ケーブルの配線に必要なスペースも大幅に削減できます。結果として,従来の装置と比べ,制御機器のスペースを1/3に最小化できる見込みがつきました。」(H氏)
さっそく,H氏は山洋電気のサポートのもと,試作機にモーションコントローラ「SANMOTION C S100」を組み込み,評価を開始しました。
「EtherCATに対応しながら,大幅な省スペース化を実現し,さらに,接着剤塗布の正確性を保ちつつサイクルタイムを短縮できました。また,配線工数が減ったことによるメンテナンス工数も大幅に減らすことができました。お客さまからも高い評価をいただき,山洋電気には大変感謝しています。」(H氏)
(*1)型番:SMC100の場合。シーケンス,モーション,ロボット制御が1台でできるデジタル入出力内蔵モーションコントローラとの比較。2018年10月10日現在,当社調べ。
(*2)Internet of things: あらゆるモノをネットワークにつなげ,情報交換することにより相互に制御する仕組み。
ステッピングモータについて詳しくは「ステッピングモータとは? 仕組み,種類,使い方(駆動方式・制御方法),メリットや特徴を解説」もご覧ください。
公開日: