各種検査装置を製造するS社では,基板の導通・短絡を検査する基板検査装置の新モデル開発に着手していました。新たな検査装置について,同社開発部のN部長はこう語ります。
「今までは,搬送コンベアの幅変え軸にステッピングモータを使用し,検査部の基板を押さえるステージの昇降にエアーシリンダを使用していました。新モデルではこの昇降機構もモータに変更しようと考えていました。
というのも,エアー式ですと工場内にエアーを供給する専用の設備を設置する必要があり,配管やコンプレッサーの設計に手間がかかるうえにコストも馬鹿になりません。お客さまからも設備投資のコストを削減したいという要望がありました。こうしたことから,当社の検査装置も,よりメリットの大きい電動式への切り替えが必要と判断しました。」(N氏)
エアーレス化を実現するため,S社開発部では最適なステッピングモータの選定をはじめました。しかし,N氏ら開発部のメンバーはここで課題に突き当たることに。
「基板を押さえるステージを昇降する機構をエアーレス化するため,ステッピングモータへの置き換えを検討しました。しかし,ステッピングモータにボールネジを取り付けるとプーリーやカップリングなどの付属部品を装着しなければならずL寸法が大きくなり,結果的に機構が大型化してしまいます。省スペース化も優先課題でしたので,何とか代替の案を探し出す必要がありました。」(N氏)
N氏らS社開発部では情報取集を続けました。
課題を抱えていたN氏は展示会に参加した際に,山洋電気のブースに訪れ,担当者に課題について相談しました。
N氏の課題をヒアリングした山洋電気の担当者は,リニア駆動ステッピングモータ「SANMOTION F5」を提案しました。
「このモデルは,ステッピングモータにボールねじが内蔵されているので,ボールねじ,プーリーやカップリングなどの付属部品が不要になりL寸法を大きく抑えられます。当初検討していた機構に比べ,モータの組み込みスペースを抑えることができました。トルクは十分でしたし,ステッピングモータは完全停止するため,エアーに比べ昇降ステージの位置精度を向上させることができました。
何よりも山洋電気は当社の他の部署でも実績があったので,採用決定のための評価もスムーズに進めることができました。」(N氏)
ほどなくS社は,「SANMOTION F5」の採用を決定。新モデルの基板検査装置に組み込み,無事に開発を成功させました。
「期待通り,機構の小型化を実現することができ,位置精度も向上したためサイクルタイムもエアー式モデルに比べ1.2~1.5倍ほど向上しました。お客さまからは,エアー設備のために配管設計を検討する手間が省けた,設置場所の制約が少なくなった,生産性が向上した,といった評価をいただいております。山洋電気にはこれからもいろいろとお願いしたいと思っています。」(N氏)
ステッピングモータについて詳しくは「ステッピングモータとは? 仕組み,種類,使い方(駆動方式・制御方法),メリットや特徴を解説」もご覧ください。
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