年間数千万トンの食品が廃棄されている日本。政府は食品ロス削減推進法を制定し,生活者,食品製造・小売業者,外食業者など,それぞれに食品ロスを低減する取り組みを求めています。
食品加工に欠かせない情報制御システムとして,トレーサビリティー,品質管理,プロセス管理があります。
食品の製造・販売をおこなうA社でも,これらの情報管理のために,装置の中の制御機器をUPS(無停電電源装置)でバックアップし,万一の場合に備えていました。ところが,UPSを導入していたにも関わらず,データの欠落や制御不良による食品の廃棄(食品ロス)が発生していました。製造技術担当者のK氏はこう説明します。
「食品の加工工程において,温度・時間・流量などのデータが一部でも欠落すると品質に影響するため,廃棄せざるを負えません。しかし,何かの拍子でそれらの制御機器が一時停止し,再起動が起こり,データが欠落したため,食品廃棄が発生していました。」(K氏)
電源トラブルが想定される事象でしたが,K氏は壁に突き当たります。
「頻繁に発生するわけではないため,長年食品を廃棄することで対応していましたが,年々その頻度が増えているのと,食品ロス削減推進法案により,対策の優先度が高くなりました。UPSを導入しているため,停電の影響はないと考えました。そこで,ノイズの影響ではないかと想定し,さまざまな対策を講じましたが一向に改善されないため,困っていました。」(K氏)
K氏は抱えている問題を代理店に相談したところ,山洋電気を紹介されました。問題をヒアリングした山洋電気の担当者は,「常時商用方式」のUPSを使用していることが原因ではないかと仮説を立てました。
【山洋電気が立てた仮説】
①電源要因
・工場で動力モータが起動する際,電圧が一時的に低下し,UPSがバッテリ運転に切り替わる
・バッテリ運転に切り替わる際に,瞬断(5msec)が発生する
②装置要因
・DC電源のコンデンサの経年劣化により,電解液が揮発し,電気をためる機能が低下
・装置内のDC電源にも電圧低下が起こり,制御機器の再起動が起こる
「こうした要因から,UPSを使用していてもデータが取れていない事象が発生しているのではないか,とのことでした。また鉛バッテリは高温下では劣化が進むため,カタログスペックどおりのバックアップ時間を確保できないことがあるという指摘も受けました。」(K氏)
A社はこうした指摘を受け,山洋電気のサポートを受けながら工場内の測定を実施しました。その結果,これらの仮説が立証されたのです。
「まず,10%ほどの電圧降下が頻繁に発生していました。これはUPSがバッテリ給電に切り替わるギリギリの電圧降下でした。いつバッテリ運転モードに切り替わってもおかしくない状態でした。また,交換から2年しか経っていないのにバッテリのアラームが出ているUPSも見つかりました。UPSのサイズの関係で操作パネルが見えない向きに設置されていたのがアラームの見落としに繋がっていたようです。」(K氏)
山洋電気の担当者は,リチウムイオン電池搭載モデルの無停電電源装置「SANUPS E11A-Li」の給電品質優先モード(常時インバータ運転)での使用を提案しました。
給電品質優先モードとは
常にインバータを通して,電気を電気機器に供給する方式です。停電時もインバータを経由して電力を供給するので,給電の切り替えがなく,電圧変動が起こらずに無瞬断で給電できます。常にインバータを経由するので,信頼性の高い給電方式といえます。
測定結果を受けてA社は,無停電電源装置「SANUPS E11A-Li」の採用を決定し,工場内のUPSを入れ替えました。導入後の効果についてK氏はこう説明します。
「現行のUPSよりコンパクトなので配電盤内に整理して収納することができました。また,蓄電池がリチウムイオン電池になり,鉛バッテリのように定期点検や交換の必要がなくなり,手間やコストも抑えられました。通常より長い3年間の保証※1があることも安心に結び付いています。何より,データ欠落の原因を突き止め,問題を解決できたことが一番の成果です。工程トラブルは食品ロスだけでなく,再稼働にともなう段取りや調整にも多くの時間を必要とします。改善されたことで業務効率が向上し,残業も減り,山洋電気にはとても感謝しています。また,何かありましたら,相談したいと思います。」
※1 UPSの3年保証に関する詳細はこちらをご覧ください。
※リチウムイオン電池について詳しくはUPS(無停電電源装置)のバッテリー寿命を比較!もご覧ください。
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