
工作機械,産業用ロボットなどを手掛ける産業機械メーカーR社。近年,海外に拠点を設ける製造メーカーからの受注が拡大するなか,同社は部品実装検査装置の新モデル開発について,いくつかの問題に直面していました。
というのも,新モデルには装置に搭載する生産制御システムのバックアップのために,UPSを付属させることになっていましたが,“装置コスト低減”のために「常時商用給電方式」の採用を検討していました。しかしこの方式では信頼性にいくつかの課題があったのです。同社エンジニアリング部のH部長はこう語ります。
「常時商用給電方式は低価格ですが,停電時に“瞬断”が発生することでデータを破損する恐れがあり,システムのデータを守るという点では大きな不安がありました。」
※常時商用給電方式について詳しくは停電の基礎知識と対策:常時商用給電方式のUPS
加えて,常時商用給電方式は,海外での使用についても問題を抱えていました。
「電源事情の安定した国内ではほぼ問題ないのですが,安定した電力供給が望めない海外拠点においては,常時商用給電方式では電圧や周波数の変動を補正できず,リスクとなります。」(H氏)
こうした問題を解決するためには入力電圧に関係なく常に安定した出力電圧と周波数を確保した電力を供給する「常時インバータ給電方式」の採用が望ましいと考えられました。しかし,高価なために装置コスト削減の要求を満たせなくなります。信頼性とコストのジレンマにH氏は頭を抱えてしまいます。
「お客さまからは国内外の生産拠点で同じように装置を安定稼動したいという要望をいただいておりました。海外進出を図るユーザーが増えるなか,新モデルにとって海外でも国内と同様に使える点は欠かせない要素でした。」(H氏)
※常時インバータ給電方式について詳しくは停電の基礎知識と対策:常時インバータ給電方式のUPS