近年,災害による停電被害が起きるなか,製造ラインの稼働を安定させるため,多くの工場がUPSの導入に踏み切っています。特に食品工場ではラインが停止するたびに食材の大量破棄が生じ,それにともなう納期遅れも回避しなければならないため,対策は待ったなしです。しかし,導入コストや設置スペースなどの問題で導入を躊躇するケースも多いようです。
パンや菓子の製造販売を手掛けるA社。同社では数年前に停電が相次いだ際,予期せぬトラブルに巻き込まれました。製造部門のDマネージャーはこう説明します。
「ここ数年,工場で停電が何度も発生し,その都度,食材を焼成する製造ラインが停止したため,莫大な損失が出ていました。焼成機のなかのコンベアが止まって,炉の中の食材すべてが焼損したため,食材を廃棄しフードロスもかなりの量になりました。停電が発生するたびにフードロスだけでなく,生産遅延が生じ,納期遅れにつながることもあります。また清掃,点検などラインの復旧作業に大きな工数がかかります。さらに,焼成機にはセーフティ機能があるとはいえ火災の危険性もありました。」(D氏)
近年は災害級の台風が多いため,年に1~2度は停電トラブルがあると予測したD氏は,対策として無停電電源装置(UPS)の導入を検討しました。
「最初に常時インバータ方式のUPSで検討を始めました。しかし,突入電流を考慮しなければならず,装置容量に比べ,想定していたよりも大きな容量のUPSを導入する必要があることが分かりました。そうすると50kVAモデルとなり,高額なうえに設置スペースの確保も難しいため,断念していました。」(D氏)
ところがその後も停電で損失が発生。D氏は早急に対策を打つ必要に迫られていました。
常時インバータ方式とは
※常時インバータ給電方式について詳しくは停電の基礎知識と対策:常時インバータ給電方式のUPS
※突入電流について詳しくは停電の基礎知識と対策:突入電流や高調波による電源トラブル
焼成機の停電時バックアップについて解決策を探していたD氏は,とある生産設備の展示会で山洋電気ブースに立ち寄り,課題を相談しました。D氏から工場の課題をヒアリングした山洋電気の営業担当者は,パラレルプロセッシング方式の無停電電源装置「SANUPS E23A」を提案しました。
「山洋電気の担当者によると,パラレルプロセッシング方式のUPSは過負荷耐量が強く,突入電流に十分耐えられるため,突入電流のあるコンプレッサーやモータなどの設備にも十分対応できるとのことでした。さらに,突入電流にUPSの定格出力容量を合わせる必要がないことからUPSの容量を抑えることができます。また,当初想定した定格出力容量を抑えることで設置スペースの削減,価格も安価で導入することができると説明を受けました。」(D氏)
提案に強く興味を持ったD氏は,エンジニアからさらに詳しく話を聞くことにしました。
パラレルプロセッシング給電方式とは
※パラレルプロセッシング給電方式について詳しくは停電の基礎知識と対策:パラレルプロセッシング給電方式のUPS
「通常,UPS の過負荷耐量は,定格電圧の1.25倍~1.5倍程度ですが,提案してもらった『SANUPS E23A』は8倍までの過負荷を500msecの間保持できるということでした。そのため,最初に導入を検討していた常時インバータ給電方式UPSが50kVAだったのに対し,パラレルプロセッシング方式のUPSでは20kVAで対応できます。装置のサイズも半分ぐらいになり,加えて価格も安いので,これならなんとか導入できると期待が持てました。」(D氏)
自社に戻ったD氏は再び上層部にUPS導入を申請。ほどなくA社は山洋電気の無停電電源装置「SANUPS E23A」の正式採用を決定しました。
「被害が発生する前にUPSを導入でき,納期遅れやフードロスの心配がなく,安心しています。また生産を再開するための作業工数にリソースを割かれていたので,それもなくなり,大変満足しています。山洋電気の提案には本当に感謝しています。」(D氏)
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