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【モータ選定の基礎知識】

半導体製造装置に最適な制御用モータとは

半導体製造装置では,ナノメートル単位の位置決め精度や高応答が求められるため,制御用モータの選定は装置の信頼性・生産性を左右する重要な要素の一つです。
各工程における動作要求に対して最適なモータを選定することは,歩留まり向上や装置の安定稼働に不可欠です。
制御用モータは単なる駆動部品にとどまらず,制御系の一部として装置の動作精度を支える重要な役割を果たします。
位置決め精度や応答速度に加え,小型軽量化,耐環境性,メンテナンス性など,複数の性能指標が装置の生産性や製造品質に影響を与えるため,モータ選定には高度な技術的判断が求められます

この記事では,代表的な制御用モータの種類と特性,工程ごとの要求仕様に応じた選定ポイント,そして実際の導入事例を通じて,制御用モータ選定のヒントをお届けします。

1. 制御用モータの種類と選定ポイント

半導体製造装置に使用される制御用モータには,以下のような種類があります。それぞれの特性を理解し,工程ごとの要求仕様に応じて最適なモータを選定することが重要です。

①サーボモータ

位置・速度・トルクを高精度に制御できるモータ です。 高分解能なエンコーダを用いたクローズドループ制御により,高精度な位置決めと高い応答性を両立します。

搬送ステージやアライメント機構など,精密制御が求められる用途に最適で, 半導体製造装置の多くの工程で採用されています。
一方で,ステッピングモータに比べて高価で,制御システムがやや複雑になるという面もあります。

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②リニアサーボモータ

回転ではなく直線運動を直接行う制御用モータ です。
ボールねじなどの回転-直線変換機構が不要で,長ストロークにおける高速動作・高精度・高応答な位置決め・高加速域での安定動作を実現できます。 摩耗部品が少ないため,メンテナンス性にも優れています。

半導体製造装置の中でも,特に高速・高精度な位置決め動作が求められる工程で使用 されることの多い制御用モータです。

③ステッピングモータ

オープンループ制御で,構造がシンプルな制御用モータ です。
繰り返し動作や軽負荷用途に適しており,ガス供給やバルブ制御などの定常動作に有効です。 サーボモータに比べ安価で,コストパフォーマンスに優れています。一方,位置ずれや脱調,振動といった課題があり,制御精度の面ではサーボモータに劣ります。

半導体製造装置の中でも,ドア開閉など,比較的低速でサーボモータほどの高機能・高精度な位置決めを必要としない工程 で使用されるケースが一般的です。

④クローズドループステッピングモータ

回転中はクローズドループ制御,停止中はオープンループ制御に自動的に切り換わる制御方式で, サーボモータとステッピングモータの特長を併せ持った制御用モータ です。
ステッピングモータに比べ,脱調レス・低振動・低騒音を実現し,高信頼・高精度でサーボモータに近い滑らかな動作が可能です。また,サーボモータほどの高機能・高性能を必要としない用途では,より安価なシステム構築が可能です。

半導体製造装置の中では,サーボモータに近い動作性能と,ステッピングモータの手軽さやコスト面のバランスを重視する工程で使用されることが多い制御用モータです。

モータ種類 精度 応答性 システム難易度 コスト 使用頻度
サーボモータ
リニアサーボモータ 非常に高い 非常に高い
ステッピングモータ
クローズドループ
ステッピングモータ
モータ種類 メリット デメリット
サーボモータ
  • ・脱調(位置ズレ,モータ停止)しない
  • ・低振動・低騒音
  • ・高精度の位置決めが可能
  • ・大容量までラインアップ
    (大きな負荷でも駆動できる)
  • ・高速回転でもトルクが落ちない
  • ・システムが高価
  • ・システムが複雑
  • ・停止時に微小なハンチングがある
ステッピングモータ
  • ・制御が簡単
  • ・システムの簡素化が可能
  • ・安価なシステム構築が可能
  • ・安定停止が可能
  • ・脱調する
  • ・発熱が高い
  • ・振動する
クローズドループ
ステッピングモータ
  • ・脱調(位置ズレ,モータ停止)しない
  • ・低振動・低騒音
  • ・安価なシステム構築が可能
  • ・安定停止が可能
  • ・高容量のラインアップがない
  • ・高速領域のトルクがでない

2. 半導体製造装置に適したモータの性能とは

高度な制御が求められる半導体製造装置では,モータにも一般産業機械とは異なる性能が求められます。
ここでは,サーボモータに焦点を当て,半導体製造装置に適したモータの性能ポイントについてご説明します。

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必要十分なトルク特性がある

半導体製造装置のサーボモータ選定でまず着目すべきは,装置の負荷を確実に駆動できるトルク特性です。 最大トルクや継続トルクだけでなく,加減速中の一時的なピークトルクについても必要十分か検討する必要があります。

エンコーダの分解能が高い

サーボモータの制御精度は,エンコーダの分解能や検出方式に大きく左右されます。特に微細な位置決めが必要な工程では,高分解能エンコーダを搭載したモータが多用されます。

制御帯域幅が広い

サーボモータの制御帯域幅は,位置決め整定時間や制振特性を左右します。高速移動と停止を繰り返すアプリケーションでは,制御系のゲイン調整や,装置構造の剛性・共振対策も含めた総合的な検討が必要です。

外形寸法・重量が小さい

半導体製造装置は限られたスペースで複数軸を設置しなければならないケースがあります。モータの外形寸法や重量が大きいと,装置全体の設計に制約が生じるため,小型軽量化されたモータであることが重要視されます。

制御アンプとの接続性・拡張性に優れる

サーボシステムはモータ単体ではなく,サーボアンプや上位の制御装置との連携によって構成されるため,ネットワークプロトコル(EtherCAT,EtherNet/IPなど)への対応状況や,各種センサや安全機能との拡張性も考慮して選定する必要があります。

低振動・低発熱・省エネルギー性に優れている

半導体製造装置は,安定した高精度動作が要求されるため,モータから発生する振動や発熱がプロセスに悪影響を及ぼす可能性があります。
また,装置全体の消費電力が大きい半導体製造装置では,環境負荷低減や持続可能な開発への対応の観点から,モータの高いエネルギー効率も求められます。

安全機能が搭載されている

サーボアンプによっては,ブレーキ制御やトルク制限などの安全機能が標準搭載されています。装置全体の安全規格対応の観点からも,モータとアンプが備える安全機能を確認し,必要に応じて導入します。

製品寿命が長く信頼性が高い

半導体製造装置では24時間連続稼働が前提となるケースが多いため,サーボモータの高い信頼性が重要です。メーカーのサポート体制も含め,長期稼働を想定した選定を心がける必要があります。

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3. 山洋電気の制御用モータ製品ラインアップ

山洋電気では,半導体製造装置の多様なニーズに応える制御用モータを取り揃えています。

サーボモータ「SANMOTION G」

進化したサーボ性能,省エネルギー化を実現したACサーボシステムです。
速度周波数応答を3.5 kHz(当社従来品※比1.6 倍)に高め,エンコーダは標準23 bit (当社従来品※比64 倍)から最大で27 bit までの高分解能エンコーダが選択できます。 また,小型・軽量設計のため,装置の小型化や省スペースでの設計にも貢献します。
※当社従来品:AC サーボシステムSANMOTION R

SANMOTION G

リニアサーボモータ

高速・高精度な直線運動を実現し,サイクルタイムの短縮と生産性の向上に貢献します。
リニアサーボモータは,ボールねじのような機械的に接触・摩耗する部品を持たないため,装置のメンテナンス頻度を下げられます。
フラットタイプに加えて,モータ自身で磁気吸引力を打ち消すことで,装置の構造を簡素にできるセンターマグネットタイプや高加速度なツインタイプのリニアサーボモータもラインアップしています。

SANMOTIONG

ステッピングモータ「SANMOTION F」

高トルク,低振動,低騒音を実現しています。構成部品の見直しと最適化設計により,大幅な小型・軽量化を実現し,高トルクを得られます。
「SANMOTION F」シリーズのステッピングドライバは,標準仕様で海外の製品安全規格(UL 規格など)に準拠しています。 ラインアップが豊富で,リニア駆動のステッピングモータもございます。 真空環境対応をはじめ,シャフト加工やダンパ取り付け加工など,お客さまの個別要件に応えた柔軟なカスタマイズが可能です。

詳細ページ:モータのカスタマイズ事例

SANMOTION F

クローズドループステッピングモータ「SANMOTION Model No.PB」

サーボモータより使いやすくステッピングモータより信頼性の高い,2種類のモータの長所を備えたステッピングモータです。
位置検出センサにより,回転中はクローズドループ制御,停止中はオープンループ制御に自動的に切り換わります。
このため,ステッピングモータのような脱調はおきず,装置の低振動化と信頼性向上に貢献します。

SANMOTION Model No.PB

4. 装置設計の課題をどう乗り越えたか?成功事例に学ぶ

事例①:中空軸ステッピングモータで精度向上とコスト削減

半導体製造装置メーカーY社では,搬送機構のベルト駆動による精度低下とメンテナンス負荷が課題でした。山洋電気は, 56mm角2相ステッピングモータをベースにした中空軸タイプをカスタマイズ提案。ボールスプラインを中空軸に通すことで, 機構の簡素化・省スペース化・高精度化を実現し,装置全体で約30%のコスト削減に成功しました。
ステッピングモータの事例|015|「中空軸モータ」の採用で,精度向上とコスト削減は両立可能か?
※2012年公開の事例です。

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事例②:クローズドループステッピングモータで,高スループット化とコストの両立を実現

半導体製造装置メーカーE社では,搬送工程の高スループット化とコスト削減が課題でした。山洋電気は, クローズドループステッピングシステム「SANMOTION Model No.PB」を提案。低速域で高トルクを発揮し,脱調レスで信頼性を確保するとともに, 4軸一体型アンプにより省スペース化を実現。位置決め整定時間を大幅短縮し,駆動系のコスト約75%ダウンに成功しました。
ステッピングモータの事例|007|半導体製造装置の開発リードタイム短縮に貢献。
※2010年公開の事例です。

事例③:SANMOTION Gによる自動化と品質向上の両立

山洋電気・神川工場では,エンコーダ用ディスクモジュールの組立工程を自動化に取り組んでいました。エンコーダ用ディスクモジュールの組み立てには,熟練した技術が必要であり,挑戦が始まりました。サーボモータ「SANMOTION G」による高精度な位置決めにより接着剤の自動塗布+サイクルタイムの短縮を実現しました。
ACサーボモータの事例|130|内製化・自動化による生産革新で「生産工数1/2」と「リードタイム1/4」を実現した生産技術部のチャレンジ
※2022年公開の事例です。

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