TECH COMPASS
山洋電気の製品・技術情報サイト
山洋教室
【モータ選定の基礎知識】

農業用機械・食品製造装置に最適なモータとは

農業や食品製造の現場では, 食の安全性確保と人手不足による生産効率の向上が最重要課題です。
農業分野では,後継者不足と人手不足に伴う自動化が急務です。また食品製造分野では,HACCP義務化により衛生管理の徹底が求められる中,業務の効率化のため,自動化技術の導入が急速に進んでいます。
こういった自動化の中核を担うのが「制御用モータ」です。安定した動作制御により,包装や充填工程でのばらつきを抑え,装置全体としての品質向上に貢献します。また,防水性を備えたモータを採用することで,洗浄装置のような水がかかる用途や屋外環境での使用も可能になります。

この記事では,代表的な制御用モータの種類,特性と選定ポイント,そして実際の導入事例を通じて,制御用モータ選定のヒントをお届けします。

1. 制御用モータの種類と選定ポイント

農業用機械・食品製造装置に使用される制御用モータには,以下のような種類があります。それぞれの特性を理解し,装置に最適な選定を行うことが重要です。

①ステッピングモータ

オープンループ制御で,構造がシンプルな制御用モータ です。 繰り返し動作や軽負荷用途に適しており,農業機械や食品製造装置では,包装ラインの搬送や充填工程など,定常的な位置決めが求められる場面で有効です。サーボモータに比べ安価で, コストパフォーマンスに優れています 。一方,位置ずれや脱調,振動といった課題があり,制御精度の面ではサーボモータに劣ります。
農業用機械や食品製造装置は,コスト面や簡単に制御できるので,最も使用される制御用モータです。

banner_dl_fan_selection_1000x270

②サーボモータ

位置・速度・トルクを高精度に制御できるモータ です。
高分解能なエンコーダを用いたクローズドループ制御により,高精度な位置決めと高い応答性を両立します。農業用機械では精密播種や自動収穫ロボット,食品製造装置ではロボットアームやアライメント機構など,精密制御が求められる工程に最適です。一方で,ステッピングモータに比べて高価で,制御システムがやや複雑になるという面もあります。

③クローズドループステッピングモータ

回転中はクローズドループ制御,停止中はオープンループ制御に自動的に切り換わる制御方式で,サーボモータとステッピングモータの特長を併せ持った制御用モータ です。
ステッピングモータに比べ,脱調レス・低振動・低騒音を実現し,高信頼・高精度でサーボモータに近い滑らかな動作が可能です。また,サーボモータほどの高機能・高性能を必要としない用途では,より安価なシステム構築が可能です。負荷に応じて電流を最適に制御できるため,農業用機械・食品製造装置では,粘度がある液体の撹拌などに最適です。

モータ種類 精度 応答性 システム難易度 コスト 使用頻度
ステッピングモータ
サーボモータ
クローズドループ
ステッピングモータ
モータ種類 メリット デメリット
ステッピングモータ
  • ・制御が簡単
  • ・システムの簡素化が可能
  • ・安価なシステム構築が可能
  • ・安定停止が可能
  • ・脱調する
  • ・発熱が高い
  • ・振動する
サーボモータ
  • ・脱調(位置ズレ,モータ停止)しない
  • ・低振動・低騒音
  • ・高精度の位置決めが可能
  • ・大容量までラインアップ
    (大きな負荷でも駆動できる)
  • ・高速回転でもトルクが落ちない
  • ・システムが高価
  • ・システムが複雑
  • ・停止時に微小なハンチングがある
クローズドループ
ステッピングモータ
  • ・脱調(位置ズレ,モータ停止)しない
  • ・低振動・低騒音
  • ・安価なシステム構築が可能
  • ・安定停止が可能
  • ・高容量のラインアップがない
  • ・高速領域のトルクがでない

防水性能について

農業や食品製造の現場では,水分や,湿気,粉塵にさらされる環境が多く,防水・防塵性能のあるモータが必要なことが多くあります 。特に食品製造では,HACCP対応の衛生管理のために定期的な高圧洗浄が行われることが多く,モータがそれらに耐えられる構造であることが求められます。
当社山洋電気の制御用モータは,保護等級IP40~IP67まで,幅広くラインアップしています。
※IP40は異物に対しての保護のみで,水の侵入に対しては無保護

保護等級の見方と表

保護等級の見方と表

2. 農業用機械・食品製造装置でのモータ使用例

どういった機械・装置にどのモータが使われるのか,想定される使用例をみてみましょう。
※一例のご紹介です。実際の最適なモータは,装置設計や使用環境により異なります。

banner_dl_fan_selection_1000x270

農業用機械

①播種機(種まき機)

• 推奨モータ:ステッピングモータ
• 理由:種の間隔や深さを一定に保つ必要があるが,ミリ単位までの高精度な制御は不要。

②自動収穫ロボット

• 推奨モータ:サーボモータ
• 理由:刈り取り位置や速度をリアルタイムで調整するため応答性が重要。

③自動選果機

• 推奨モータ:ステッピングモータ
• 理由:果実の位置決めや搬送に簡易制御で十分な場合が多く,低コスト。

④搬送装置

• 推奨モータ:ステッピングモータ
• 理由:トレイ搬送は低速でよい場合が多く,オープンループで制御可能。

⑤液肥・農薬撹拌タンク

• 推奨モータ:クローズドループステッピングモータ
• 理由:液体の粘度や量が変化することから,負荷変動に対応できるクローズドループステッピングモータが適している。

食品製造装置

①搬送コンベア

• 推奨モータ:ステッピングモータ
• 理由:低速でよい場合が多く,オープンループで制御可能。

②充填機

• 推奨モータ:ステッピングモータ
• 理由:液体やペーストの量を段階的に調整するため,ステップ制御が最適。精密な計量や高速性が求められる場合,サーボモータやクローズドループステッピングモータを選択。

③カッティング装置(スライサー)

• 推奨モータ:ステッピングモータ,クローズドループステッピングモータ
• 理由:切断位置や速度を段階的に制御。サーボモータほどの精度が不要でコスト重視な場合が多い。 カッティング時の油脂が負荷になる場合や,精密な計量や高速性が求められる場合,サーボモータやクローズドループステッピングモータを選択。

④トッピング装置

• 推奨モータ:ステッピングモータ
• 理由:具材の位置決めや投入タイミングを,オープンループで制御可能。

⑤充填ポンプ(クリーム・ソース)

• 推奨モータ:クローズドループステッピングモータ
• 理由:充填量を精密に制御するため,負荷変動に対応できるクローズドループステッピングモータが適している。

⑥小型包装機

• 推奨モータ:ステッピングモータ
• 理由:高速ではないため,オープンループ制御で十分な場合が多く,低コスト。

⑦ラベリング装置

• 推奨モータ:ステッピングモータ
• 理由:ラベル貼付位置をステップ制御で簡単に調整可能。

⑧箱詰めロボット,パレタイジングロボット

• 推奨モータ:サーボモータ
• 理由:多軸動作が必要かつ高精度な位置決めが必要なため,サーボモータが最適。

こちらの記事もおすすめ:ステッピングモータで,食品工場の高機能化を実現

banner_dl_fan_selection_1000x270

3. 山洋電気の制御用モータ製品ラインアップ

山洋電気では,農業用機械・食品製造装置の多様なニーズに応える制御用モータを取り揃えています。

ステッピングモータ「SANMOTION F」

高トルク,低振動,低騒音を実現しています。構成部品の見直しと最適化設計により,大幅な小型・軽量化を実現し,高トルクを得られます。
「SANMOTION F」シリーズのステッピングドライバは,標準仕様で海外の製品安全規格(UL 規格など)に準拠しています。 ラインアップが豊富で,保護等級を取得しています(IP40~IP65)。 シャフト加工やダンパ取り付け加工など,お客さまの個別要件に応えた柔軟なカスタマイズが可能です。

詳細ページ:モータのカスタマイズ事例

SANMOTION F

サーボモータ「SANMOTION G」

進化したサーボ性能,省エネルギー化を実現したACサーボシステムです。
速度周波数応答を3.5 kHz(当社従来品※比1.6 倍)に高め,エンコーダは標準23 bit (当社従来品※比64 倍)から最大で27 bit までの高分解能エンコーダが選択できます。 また,小型・軽量設計のため,装置の小型化や省スペースでの設計にも貢献します。
「SANMOTION G」のサーボモータ本体は,保護等級IP67を取得しています。
※当社従来品:AC サーボシステムSANMOTION R

SANMOTION G

クローズドループステッピングモータ「SANMOTION Model No.PB」

サーボモータより使いやすくステッピングモータより信頼性の高い,2種類のモータの長所を備えたステッピングモータです。
位置検出センサにより,回転中はクローズドループ制御,停止中はオープンループ制御に自動的に切り換わります。
このため,ステッピングモータのような脱調はおきず,装置の低振動化と信頼性向上に貢献します。
負荷に応じて電流を最適に制御します。モータ本体は,保護等級IP40を取得しています。

SANMOTION Model No.PB

4. 装置設計の課題をどう乗り越えたか?成功事例に学ぶ

事例①:繁忙期に合わせて食品機械の加工速度を上げたい!

食品加工機メーカーH社では,繁忙期の生産量増加に対応するため,加工機の高速化が課題でした。従来のインダクションモータでは低速域のトルク不足を補うためモータ容量を上げる必要があり,発熱による食品の品質への影響も懸念されていました。山洋電気はクローズドループステッピングシステム「SANMOTION Model No.PB」を提案。現行モータに比べサイズ1/5,重さ1/10で,発熱を抑制。さらに,速度調整はスイッチで簡単。結果として加工速度は2倍となり,装置の小型化を実現しました。
ステッピングモータの事例|095|繁忙期に合わせて食品機械の加工速度を上げたい!
※2019年公開の事例です

banner_dl_fan_selection_1000x270

事例②:サーボモータのノウハウがなく,オーバースペックな選定をしてしまっていたが…

食品搬送装置メーカーB社では,サイクルタイム短縮とコスト削減が課題でした。新製品でサーボモータを採用しましたが,ノウハウ不足により選定に不安がありました。山洋電気が選定サポートしたところ,オーバースペックであることがわかりました。モータとアンプの容量を最適化し,コストダウンを実現しました。さらに,IP65防水性能で洗浄対応も可能となりました。
ACサーボモータの事例|079|モータとアンプの容量を最適化し,コストダウンを実現!
※2018年公開の事例です。

事例③:製品開発を成功に導いたコンパクトなモータと綿密な技術サポートとは?

刃物研磨機メーカー三光製作所では,研磨機の自動化を進めたいもののノウハウがないことが課題でした。山洋電気はリニア駆動ステッピングモータと4軸一体型ドライバ,モーションコントローラ「SANMOTION C S100」を提案し,ベテランの技を再現する制御方法をサポート。自動化と省スペース化を両立し,開発を成功に導きました。
モーションコントローラの事例|112|製品開発を成功に導いたコンパクトなモータと綿密な技術サポートとは?
※2021年公開の事例です。

監修:山洋電気株式会社 営業本部 SANMOTIONグループ

公開日:

モータ・ドライバ
【種類と特長】山洋電気の製品一覧
山洋電気のサーボモータ・ステッピングモータ・モーションコントローラ 製品一覧
モータ・ドライバ
【種類と特長】ステッピングモータとは?用途・使用例
ステッピングモータとは? ステッピングモータの用途・使用例
モータ・ドライバ
【種類と特長】ステッピングモータとは?仕組み・種類
ステッピングモータとは? 仕組み,種類,使い方(駆動方式・制御方法),特徴